エアコン工事でディーゼル爆発が起きる原因とは?ポンプダウン時の重大事故を防ぐ安全知識
エアコンの取り付けや取り外しでは、冷媒配管、電気配線、真空引き、試運転など、さまざまな専門作業を行います。
そのなかでも、重大な人身事故につながる危険がある作業として知っておかなければならないのが、ポンプダウン時などに発生する「ディーゼル爆発」です。
ディーゼル爆発という名前を聞くと、軽油やディーゼル発電機が爆発する事故を想像するかもしれません。しかし、エアコン工事でいうディーゼル爆発は、室外機のコンプレッサー内部に入り込んだ空気が強く圧縮され、異常な高温・高圧状態になることで冷凍機油が発火し、コンプレッサーが破裂する現象を指します。
室外機の外板が少し変形する程度の事故ではありません。コンプレッサー本体や室外機の部品が勢いよく飛散し、近くにいる作業員やお客様が重傷を負う可能性があります。
エアコン工事に携わる以上、「手順を覚えている」だけでなく、なぜその手順を守る必要があるのかまで理解しておくことが大切です。
エアコン工事で起きるディーゼル爆発とは
エアコンのコンプレッサーは、冷媒を圧縮して冷凍サイクル内を循環させる重要な部品です。
通常は、指定された冷媒が決められた状態で循環することを前提として設計されています。しかし、何らかの理由で冷媒回路内に大量の空気が入り、その空気をコンプレッサーが圧縮し続けると、内部の温度と圧力が急激に上昇します。
空気は圧縮されると温度が上がります。これはディーゼルエンジンが、圧縮によって高温になった空気の中で燃料を発火させる仕組みと似ています。
エアコンの場合は、コンプレッサー内部にある冷凍機油が高温によって発火し、燃焼に伴って内部圧力がさらに上昇します。その結果、強固に作られているコンプレッサーの外装ケースが破裂することがあります。
日本冷凍空調工業会では、冷凍サイクル内への空気混入、冷媒回路内の閉塞、コンプレッサーの運転という条件が重なった場合、異常な高温・高圧状態となり、冷凍機油が着火して破裂するおそれがあると注意を呼びかけています。
最も注意したいのがポンプダウン作業
ポンプダウンとは、エアコンを取り外す際に、室内機や接続配管の中にある冷媒を室外機へ回収する作業です。
移設工事や入れ替え工事では日常的に行われる作業ですが、バルブ操作や運転停止の順番を誤ると、ディーゼル爆発を発生させる原因になります。
特に危険なのが、液側バルブを閉じてコンプレッサーを運転している状態で、ガス側バルブを閉じないまま配管を外してしまうケースです。
この状態では、コンプレッサーが外気を吸い込み続けます。取り込まれた空気はコンプレッサー内部で何度も圧縮され、温度と圧力が急激に上昇します。
実際に、ポンプダウン中に三方弁を閉じず、コンプレッサーを停止しないまま配管を取り外したことで外気が流入し、室外機が大きく破損した事故が報告されています。事故を起こした作業員は、それ以前にも同じ方法で多数の作業を経験していました。事故が起きなかった過去の経験が、作業方法の正しさを証明するわけではないことが分かります。
冷媒が不足している状態でポンプダウンを行う危険
ポンプダウン前には、エアコンの冷媒が正常に残っているかを確認する必要があります。
配管折れ、フレア接続部からの漏れ、室内機や室外機の故障などによって冷媒がほとんど残っていない場合、通常どおりポンプダウンを行うことは危険です。
冷媒がない状態でコンプレッサーを運転すると、配管の漏れや開口部から空気を吸い込む可能性があります。液側バルブが閉じられているなど、冷媒回路内に閉塞部分がある状態では、吸い込んだ空気が逃げずに圧縮され続けることがあります。
冷媒漏れが疑われる場合や、圧力が正常に確認できない場合は、無理にポンプダウンを続けてはいけません。冷媒回収機を使用するなど、機種と現場の状態に合った方法へ切り替える必要があります。
日本冷凍空調工業会も、配管折れなどによって冷凍サイクル内に冷媒がない場合は、ポンプダウンを行わないよう注意しています。
圧力を確認せず感覚だけで作業する危険
ポンプダウンを「何秒運転したか」「音が変わったか」といった感覚だけで判断するのも危険です。
配管長、外気温、機種、冷媒量、コンプレッサーの状態によって、圧力の下がり方は変わります。以前と同じ時間だけ運転したとしても、同じ状態になるとは限りません。
ゲージマニホールドを接続せず、サービスポートから出る音だけで圧力を判断する方法では、冷媒回路内の状態を正確に確認できません。さらに、サービスポートを不用意に押したことで、ごみの噛み込みや弁の不具合を招き、空気が入り込む原因になる可能性もあります。
経験のある業者ほど、作業時間を短縮するために手順の一部を省きたくなる場面があります。しかし、コンプレッサーの破裂事故は、数分の短縮と引き換えにできるような軽い事故ではありません。
ゲージによる圧力確認とメーカー指定の作業手順を守ることが、作業員自身の命を守ります。
酸素や圧縮空気による気密試験は行わない
据え付け工事や修理作業では、配管の漏れを確認するために気密試験を行うことがあります。
このとき、酸素や圧縮空気を冷媒配管へ入れることは非常に危険です。
過去には、エアコン配管の気密試験に酸素を使用した状態でコンプレッサーを運転し、内部温度が上昇してディーゼル爆発に至り、作業員が負傷した事故も報告されています。
酸素は燃焼を強く助ける性質があるため、冷凍機油と高温・高圧状態が重なると、爆発的な燃焼につながる危険があります。
気密試験は、対象機種の据付工事説明書や技術資料を確認し、指定された方法で窒素ガスを使用して行います。酸素、可燃性ガス、一般的なエアコンプレッサーの圧縮空気を代用してはいけません。
据え付け時のバルブ開放忘れにも注意する
ディーゼル爆発は、取り外し時だけに起こるものではありません。
新規取り付けや移設後の試運転でも、液側バルブやガス側バルブを十分に開けないまま運転すると、冷媒回路内に閉塞した部分が生まれる可能性があります。
真空引きが完了し、接続部の確認を行った後は、液側とガス側の両方のバルブが確実に全開になっているか確認してから運転を開始します。
バルブを途中までしか開けていない状態や、開けたつもりで閉じたままになっている状態では、コンプレッサーに大きな負担がかかります。
試運転前のバルブ確認は単純な作業に見えますが、冷媒回路を正常な状態にするための重要な工程です。
作業しにくい設置環境では無理をしない
狭いベランダ、壁際に寄り過ぎた室外機、窓から身を乗り出さなければバルブへ手が届かない設置状況では、バルブの開閉状態を正確に確認できないことがあります。
手元が見えにくいまま六角レンチを回し、感覚だけで全閉や全開を判断すると、操作ミスを見逃しやすくなります。
施工スペースが狭い場合は、室外機の位置を一時的に動かす、安定した作業姿勢を確保する、補助者に確認してもらうなど、安全に操作できる環境をつくる必要があります。
エアコン工事では、早く作業を終えることよりも、確認できる姿勢を整えることが優先されます。
「いつも大丈夫だった」が最も危険な考え方
ディーゼル爆発の怖いところは、誤った手順を行っても、毎回必ず事故が起きるわけではない点です。
冷媒の残量、空気の混入量、配管の状態、コンプレッサーの運転時間などが重なったとき、突然大きな事故につながります。
何十台、何百台と同じ方法で作業して問題がなかったとしても、その方法が正しいとは限りません。むしろ、慣れている作業ほど確認を省きやすくなるため注意が必要です。
ポンプダウン前の冷媒状態、ゲージによる圧力、バルブの開閉、コンプレッサーの停止、停止後の配管取り外しまで、一つずつ確実に確認することが重要です。
機種によってはポンプダウンができないものもあります。業務用マルチエアコンや追加冷媒量の多い設備などでは、一般的なルームエアコンと同じ方法を使用できない場合があります。現場経験だけで判断せず、メーカーの技術資料や据付工事説明書を確認する姿勢が欠かせません。
安全を守る施工がエアコン業者への信頼につながる
エアコン工事は、室内機を水平に取り付け、配管をきれいに仕上げるだけの仕事ではありません。
冷媒の性質、コンプレッサーの構造、圧力変化、電気工事、ドレン排水など、幅広い知識を使いながら、現場ごとに安全な施工方法を判断する専門職です。
ディーゼル爆発は、正しい知識と基本手順を守ることで防げる事故です。一方で、手順の省略や思い込みが重なると、作業員だけでなく、お客様や周囲の建物まで巻き込む重大事故に発展します。
作業が早いこともエアコン業者にとって大切な力ですが、安全確認を省かず、異常を感じたときに作業を止められることも重要な技術です。
基本を軽く見ず、機種ごとの施工方法を確認し、冷媒回路の状態を数値で判断する。その積み重ねが事故を防ぎ、長く現場を任せてもらえるエアコン工事業者につながっていきます。
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